Azusa

梓弓|atelier thu | 兵庫、神戸の建築設計事務所

Project Name

梓弓



Location宝塚
Main use旅館

昭和26年創業の宝塚温泉を代表する温泉旅館の客室改装計画である。宝塚大劇場がほとりを流れる武庫川の対岸に位置する。客室は広縁のある和室が中心となっており、川側に面した窓からは武庫川沿いに映える宝塚の景色を一望しながらゆったりと過ごすことができるが、床座だけではなく、多様な宿泊者に対応すべく昨今の生活様式に合わせた改装計画が求められた。

部屋の間取りは設計当時の意匠を尊重し、踏込は壁の塗り直しのみとし、腰掛けを新たに設けた。

 

部屋にはベッドを配置し、広縁はダイニングへと造りかえた。部屋に入ると畳のい草の香りが広がり、ダイニングと仕切る格子戸から窓の景色が垣間見れる。壁は手漉き和紙を喰い裂きのまま貼ることで柔らかな風合いを出している。

 

目を引く土壁は左官職人の久住章氏により仕上られている。赤土の土壁に「妙喜庵待庵」の床(とこ)と同じ、千利休が秀吉を招くため、急いで経年変化の風情を出す為に墨で色付けを施した技法が使われている。赤と黒の繊細な曲線は桂離宮茶屋・笑意軒の襖絵をモチーフにされている。

 

ダイニングでは景色を眺めながら、小料理店から始まった自慢の懐石料理を頂くことができる。テーブルは重厚で繊細な木目をもつ水目桜の無垢材を使用している。